どの業界でも誇大広告を出すことは禁止されていますが、不動産業界においては特に厳しいルールが定められています。
ルール違反をしてしまうと場合によっては処分されてしまうケースもあるため、なかなか広告を出せずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
今回は不動産広告(物件広告)を出す際に確認すべき表示内容や基準、表示規約について解説していきますので、お悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
目次
不動産広告を出す際、不動産の表示に関する公正競争規約や宅地建物取引業法、景品表示法といったものを守って広告を出す必要があります。
このなかにある宅地建物取引業法では、
といった細かいルールが定められています。
また、景品表示法では、サービスの品質や価格について、実際よりも著しく優良又は有利であると見せかける表示(=不当表示)を禁止しています。
他にも、
をおとり広告とみなし、これらに該当する広告を出した場合には、措置命令を受ける可能性があります。
宅地建物取引業法に違反した場合、内容により指示処分(宅建業法65条1項・3項)や業務停止(宅地業法65条2項・4項)、免許取消(宅建業法66条1項)のほか、刑事罰などの処罰を受ける可能性があります。
景品表示法においても処罰に関するルールが決まっていますが、この法律は不動産広告だけでなく、広告表示全般に対しての規制となっており、違反広告に関する大まかな方針しか決まっていません。
そのため、不動産業界では不動産広告独自のルールとして「不動産の表示に関する公正競争規約」を定めており、この規約を守っていれば景品表示法を遵守できるようになっています。
「不動産の表示に関する公正競争規約」に違反した場合は、不動産公正取引協議会による調査がおこなわれ、警告とともに1度目の場合は50万円以下の罰金、警告に従わない場合や2度目の規約違反があった場合は500万円以下の罰金が科せられるケースがあります。
また、公正取引協議会の構成員である資格を停止し除名処分になることもあるので注意が必要です。
しかし、ルールや法律というのは規制内容がわかりづらく、遵守するつもりであっても知らず知らずのうちに不当表示になっていたなど、違反との境界線が把握しにくいことも少なくありません。
ここからは、「不動産の表示に関する公正競争規約」の具体的な内容を解説していきます。
「不動産の表示に関する公正競争規約」においては、以下の5類型が不動産広告における規制の対象となっています。
(1)物件自体による表示およびモデルルームその他これらに類似する物による表示
(2)チラシ、ビラ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告表示(電話によるものを含む。)
(3)ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを
む。)ネオン・サイン、アドバルーンその他これらに類似する物による広告及び陳列物又は実演による表示
(4)新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告
(5)情報処理の用に供する機器による広告表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。)
引用:公正競争規約 第3節 用語の定義5
上記のなかでも、とくに留意したいのが(5)の広告表示です。
近年は、物件探しをするツールとしてインターネットを活用する方が多く、またリスティング広告などのWEB広告で情報を発信することも増えているため、広告運用上の違反をしないように注意しましょう。
不動産広告を作成するときには、違反広告にならないよう物件情報等いくつか確認しておきたいポイントがあります。ここでは表示基準、特定用語の使用基準について解説していきます。
不動産の表示に関する公正競争規約施行規則5章表示基準の第10条では、物件の内容や取引条件などに関わる表示基準が明記されています。
表示の基準は、一般の消費者でも簡単に理解できる表示をおこなうことを目的としており、規約によりそれぞれの表示方法が定められているため、これらを遵守しましょう。
なお前提として不動産広告において表示が必要な項目は、掲載媒体、売買なのか賃貸なのか等によって異なります。
本記事では表示が必要な項目のうち主要なものを抜粋し、表示基準を解説します。
類型 | 広告の表示内容 |
---|---|
取引態様 | 売主や貸主、代理、媒介などはこれらの用語を使って表示すること。 |
物件の所在地 | 都道府県、 郡、市区町村、字及び地番を表示すること。 (物件の種別によっては地番を除く事が出来る) |
交通の利便性 | 最寄り駅もしくは最寄りの停留所の名称および徒歩所要時間を表示すること。 |
各種施設までの距離または所要時間 | 道路の距離は、物件と各種施設の起点と着点を明示し、表示すること。 徒歩の所要時間は1分/道路距離80m、1分未満の秒数は切り上げ表示をすること。 |
面積 | 土地の面積はメートル法で表示し、1㎡未満の数値は切り捨て表示をすることができる。 また、建物の面積は延べ面積を表示し、車庫や地下室などの面積を含む場合は、その旨と面積も表示すること。 |
団地の規模 | 開発区域を工区に分けて工区ごとに開発許可を受け、当該開発許可に係る工区内の宅地又は建物 について表示をするときは、開発区域全体の規模及びその開発計画の概要を表示すること。 また、開発許可を受けていない部分が含まれる場合はその旨も明示する必要がある。 |
物件の形質 | 居室として認められない納戸、その他の部分については、納戸と明示し、地目は登記地目を表示すること。(現況地目と異なる場合は現況地目を併記) また、リフォームまたは改築を表示する場合は、リフォーム内容や時期を明示すること。 |
写真・絵図 | 写真は取引するものの写真を表示すること。ただし、未完成の建物の場合は、一定の要件を満たしている完成予想図などであれば表示することができる。 |
設備・施設等 | 水道は公営水道・施設水道もしくは井戸など、別の表示をすること。 また、ガスは都市ガスもしくはLPガスなどの表示をすること。 |
生活関連施設 | 学校や病院、官公署、公園などの生活関連施設は、原則として現在利用できるもので物件までの道路距離・施設名称(公立学校及び官公署の場合パンフレットを除き省略可)も明示する必要がある。 |
価格・賃料 | 土地は1区画、建物は1戸あたりの価格を表示すること。また、賃料・管理費・共益費は1ヶ月あたりの料金を表示すること。 |
住宅ローン等 | 住宅ローンは、金融機関の名称もしくは商号または銀行などの種類を明示して表示すること。 また、提携あるいは紹介ローン、融資限度額、借入金の利率や利息を徴する方式または済例も併記すること。 |
不動産広告では、特定の表現に対する規制が定められています。そのため、以下のような用語には注意が必要となります。
特定用語 | 使用基準 |
---|---|
新築 | 建築後1年未満、誰も居住したことがない物件のこと。 |
新発売 | 新たに造成された宅地、あるいは新築の住宅に関して、一般消費者に対してはじめて勧誘をおこなう物件のこと。 |
ダイニング・キッチン(DK) | 1室に台所と食堂の機能が併存している部屋のこと。 DKの表示にするためには1部屋の場合4.5帖以上、2部屋以上の場合6帖以上の広さが必要 |
リビング・ダイニング・キッチン(LDK) | 1室に居間と台所と食堂の機能が併存している部屋のこと。 LDKの表示にするためには1部屋の場合8帖以上、2部屋以上の場合10帖以上の広さが必要 |
宅地の造成工事の完了 | 宅地上に、すぐに建物を建築することができる状態のこと。 |
建物の建築工事の完了 | 建物をすぐに使用できる状態のこと。 |
また、広告における表現では、以下の特定用語の使用も条件を満たさない限り禁止されています。
表現の特定用語 | 用語の意味 |
---|---|
「完全」「完ぺき」「絶対」「万全」 | 物件の形質や内容などでまったく欠けることがない、もしくはまったく手落ちがない。 |
「日本一」「日本初」「業界一」「超」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」 | 物件の形質や内容、価格や取引条件、事業者の属性に関する事項において、競争事業者の供給するものや競争事業者よりも優位に立っている。 |
「特選」「厳選」 | 物件に関して、一定の基準により選別されている。 |
「最高」「最高級」「極」「特級」 | 物件の形質やそのほかの取引条件に関する事項で、最上級であることをあらわしている。 ※事実であっても、表示する場合は根拠の併記が必須 |
「買得」「堀出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「特安」「激安」「バーゲンセール」「安値」など | 物件の価格や賃料に関して、著しく安いという印象を与える言葉。 ※事実であっても、表示する場合は根拠の併記が必須 |
「完売」 | 物件の人気が著しく高く、売れ行きがよいという印象を与える言葉。 |
ただし、表現の特定用語の場合、当該表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料があるときは使用しても問題ありません。
ここからは、不動産広告で定められている表示の仕方や基準について解説していきます。なかには複雑なものもあるため、1つずつチェックしてみてください。
原則は、取引しようとするものの写真を用います。見取図や完成図(完成予想図)などのイメージ画像に関しては、コンピューターグラフィックスによる表示も可能ですが、実際より優良であると誤解をされる表示はNGと定められています。
また、見取り図や完成図(完成予想図)はその旨を明記し、周囲の状況表示は、現況に即した表示をしなければなりません。
建物価格表示は、「消費税込み」の物件価格の表示をする必要があります。
また、売価格に比較対象価格を付す、不当な二重価格表示は原則禁止となっています。
たとえば、5000万円を4500万円にした旨を記載したり、全戸20%割引キャンペーンといった割引表示をしたりすると規定に反するので注意してください。
しかし、この規定には例外があり、過去の販売価格の公表時期と値下げの時期を明示することで記載が可能になります。
具体的には、「値下げの3ヶ月以上前に公表された価格であって、かつ、値下げ前3ヶ月以上にわたり実際に販売のために公表していた価格」であり、値下げの時期から6ヶ月以内であれば、二重価格表示は認められています。
駅やそのほかの施設との距離または所要時間は、実際の道路距離を基準にして計算します。
物件から駅までは、徒歩分数の表示が必須。物件からそのほかの施設までは、道路距離(m)の表示が必須となっており、表示ルールが異なるので注意しましょう。
なお徒歩による所要時間は道路距離80mにつき1分とし、これで算出した数値を表示しますが、1分未満の端数は繰り上げて1分として扱うため注意が必要です。
また、自転車による所要時間は、道路距離を明示し、通常の走行で要する時間を表示します。
敷地面積は水平投影面積を表示し、建物面積は延べ面積を表示します。面積表示はメートル法を用い、1㎡未満の数値は切り捨てて表示することができます。
間取りは、物件の形状や機能がどのようなものであるかがわかるように表示し、各居室の畳数を付記するのが望ましいとされています。
畳数の表示は、「畳1枚あたりの広さは1.62㎡(各室の壁心面積を畳数で除した数値)以上の広さがある」ことが基準となっているため、畳1枚の広さをしっかり遵守して算出しなければなりません。
物件の所在地は、都道府県(県庁所在地・政令指定都市・特別区の場合は省略可能)や郡、市区町村や字および地番を表示します。
宅地建物取引業者の立場をあらわす取引態様では、「売主」「貸主」「代理」または「媒介(仲介)」のどれに該当するかを明確に表示しなければなりません。
とくに「代理」「媒介(仲介)」は一般消費者がわかりづらい部分なので、判断を間違えないように表示する必要があります。
免許番号は宅建業免許番号のことであり、こちらも不動産広告に表示する必要があり、商号、広告主の事務所所在地などは、インターネット広告では必須項目となります。
ただし、新聞雑誌広告などについての中古賃貸物件などは免許番号不要となります。
不動産広告においては、法律だけでなく公正競争規約も遵守しながら自社の物件の魅力を伝えなければなりません。
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