2017年10月より、不動産賃貸契約にかかる重要事項説明はオンライン上で行えることになりました。
2021年3月現在、コロナ禍の影響も受けて、オンラインで行う重要事項説明(IT重説)は着実に存在感を増しています。しかし、IT重説の導入を検討段階の不動産・賃貸仲介会社もまだ多いでしょう。
IT重説について、制度の概要やメリットとデメリット、実施方法をわかりやすく紹介します。
IT重説は、2017年10月より運用開始された制度です。
端的にいえばオンラインでの重要事項説明のことで、2021年3月現在は不動産取引のうち、賃貸契約に関する取引に限定してIT重説が認められています。
IT重説では、以下の要件を満たし、対面での重説とそん色のない内容にしなければなりません。
▶説明の内容が十分に理解できる程度に図面や書類などの映像が目視できなければならない、音声が聞き取れる環境でなければいけない
▶宅地建物取引士が記名押印した重要事項説明書と、説明に必要な資料を顧客に事前送付することが必要(PDFファイルをメール送付するといった方法は認められていない)
▶顧客に対して、「宅地建物取引士証」の提示するといった、身分の証明が必要
導入を検討中の不動産・賃貸仲介会社にむけて、IT重説のメリットとデメリットを紹介します。
IT重説を導入するメリットは、おもに次の5つです。
とくに遠方に住む顧客にとっては、店舗に出向く移動時間と交通費の負担が大きいため、それらが削減できることは大きなメリットです。
遠方の顧客の場合、一日で物件内見や物件決定、重要事項説明のすべてを終わらせたいという人も多いでしょう。
重要事項説明をオンラインでできればスケジュールに余裕が生まれ、そのぶん物件選びに時間を費やすことが可能です。
IT重説を活用すれば、移動時間や外出準備の時間を考慮しなくてすむため、忙しい顧客とも日程を合わせやすくなります。
また、長時間家を空けるのが難しい顧客でも、自宅で重要事項説明を受けることができれば日程調整の負担が軽減します。
不動産取引の専門家ではないために、重要事項説明を受ける際に緊張してしまう顧客も一定数います。
なかには、緊張のため説明を十分に聞き取れなかったり、疑問があっても質問できなかったりする例もあるようです。IT重説ならば、自宅でリラックスした状態で実施できるため、対面で行うよりも威圧感が少ないとされています。
また前述のとおり、重要事項説明書は事前送付が必須です。事前に重要事項説明書に目を通しておくことにより、予備知識をつけられ、質問内容を事前に用意できるため、理解が深まる効果も期待できます。
新型コロナウイルスの感染防止のために外出を控えたいといった顧客に対して有益です。
また「家庭の事情でしばらく来店が難しい」「ケガをしてしまったので外出が困難」といった顧客に対しても、IT重説に対応していれば遅延なく重要事項説明の実施が可能です。
重説時に使用するツールには、画像や音声データを記録できるものがあります。顧客の同意を得てデータを保存しておくと、トラブルを解決するための手段として活用できる可能性があります。
顧客が入居後にあらためて重要事項説明の内容を確認したくなったら、不動産・賃貸仲介会社に録画データの提供を求めることもできます。そのため、公平性も高めることができるツールといえるでしょう。
一方で、IT重説には以下3つのデメリットがあります。
使用するツールに指定はありませんが、画像や音声の判別、画面共有がスムーズにできるためには一定の性能が必須です。
オンラインでコミュニケーションがとれるツールは無料、有料のものがありますが、コストがかかっても一定水準以上のツールを選ぶ必要があります。
オンラインでの重要事項説明は、対面の場合と比較すると会話のテンポがつかみにくく、相手の反応が見えにくい傾向があります。
伝え方や、顧客との意思疎通方法についての事前研修が必要でしょう。また、IT重説を行うためのフローや通信トラブル時の対応など、社内マニュアルをしっかり作成しなければなりません。
通信状況が悪いと画像や音声が乱れることがあります。自社で高性能の専用ツールや安定した通信環境を備えたとしても、顧客の通信環境に不具合があれば、画像や音声の乱れが起こってしまいます。
顧客の通信環境は会社側では関与できないため、改善が難しい部分といえます。
IT重説には要件が定められています。導入後にあわてることがないよう、導入前に流れを把握しておかなければなりません。国土交通省のマニュアルを参考に、IT重説実施の流れを紹介します。
IT重説とは何か説明したうえで、顧客の同意を得ます。顧客のIT環境がIT重説に適しているかも確認しておく必要があります。
IT重説にかかるプライバシーポリシーを定めた場合は、該当プライバシーポリシーへの同意、録画や録音を行う場合はその旨の同意も取得します。
個人情報保護の観点から、当該取引物件の貸主ほか関係者にもIT重説を行う旨の同意を取得することが望ましいです。なお、各種の同意は書面でその意志を確認するのが理想的です。
重要事項説明書2部と、そのほか必要な事前資料を送付します。送付前に顧客の本人確認も行っておきましょう。
オンライン上の画面に「宅地建物取引士証」を映し、顧客が画像により「証明書の顔写真と取引士の顔が同じこと」「取引士の氏名」「取引士証の登録番号など」を確認できるようにする必要があります。取引士証の住所欄は隠すことが可能です。
実施中に通信トラブルが生じた場合は、IT重説を一時的に中断してトラブルの解決をはかりましょう。未解決のままIT重説を継続してはいけません。
事前に送付した重要事項説明書のうち1部に署名捺印をして返送します。
重要事項説明書のみならず、IT重説の際の保存データや個人情報などを適切に管理する必要があります。
IT重説に必要な準備や流れがわかっても、オンライン上で重要事項説明を行うことに不安を感じる不動産・賃貸仲介会社は多いかもしれません。
ここで、国土交通省「IT重説実施直後のアンケート結果」から、利用者の声を見てみましょう。
多くの不動産・賃貸仲介会社において「オンラインで顧客に重要事項の説明が伝わるのか」との懸念があると推測されます。しかし次のようなアンケート結果が出ているのです。
対面のほうがわかりやすいと回答した人も一定数いましたが、約6割の人が、IT重説でも理解しやすさは対面と変わりがないと回答しています。
オンラインでのコミュニケーションが普及している現代では、対面ではないことは、意思疎通の大きな障害にはならないのかもしれません。
また、IT重説では事前に重要事項説明書を送付しますが、実際に説明を受ける前に重要事項説明書に目を通している人は「86.8%」と高い割合でした。事前の閲覧によって、IT重説の理解度が深まる効果が期待できます。
一方で、音声が聞こえなかったり画像が映らなかったりする機器のトラブルは「16.3%」の人が経験しています。
また、取引士に求める姿勢・態度として、説明や資料の示し方を工夫してほしいという要望が「19.2%」と2割近くありました。
このようなコミュニケーションのトラブルを減らすためには、IT重説の際は相手方に情報が伝わっているかを、よく確認しながら進めることが重要でしょう。
IT重説で利便性の向上や移動コスト削減が実現できるため、今後も顧客ニーズが高くなることが予測されます。
ニーズに応えるためにも、ツールの導入や社内体制の整備が不可欠です。案内手順やトラブル対応など事前準備を万全にして、顧客が安心できるIT重説を行っていきたいところです。
IT重説の導入にはさまざまな準備が必要なため、サポート体制が充実しているツールを選ぶことが理想的です。
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